公認会計士が考える人生戦略ブログ

公認会計士・税理士が仕事や受験を通じて学んだ知識・価値観・生活観を中心に発信するブログ

「未払金」と「未払費用」の違いは?〜わんころくんの会計基礎講座〜

スポンサーリンク

f:id:wankorokun:20180520183512p:image

 

簿記を勉強中のみなさん、

また、経理に配属されたけど簿記がよくわからない経理担当者のみなさん、

わんころくんの簿記講座をはじめます。(←笑)

 

たまにはこういう記事も必要かな、なんて。笑

 

 

 

今回は、「未払金」と「未払費用」の違いについて出来るだけ噛み砕いて説明します。

 

 

未払金も未払費用も払っていない費用じゃないの?

 

そうなんです。

どっちも既にサービス(役務提供)が発生している費用に関して使う勘定科目であることには変わりありません。

 

でも、未払費用に関しては、条文にこのように示されています。

 

 

未払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、すでに提供された役務に対していまだその対価の支払が終らないものをいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過に伴いすでに当期の費用として発生しているものであるから、これを当期の損益計算に計上するとともに貸借対照表の負債の部に計上しなければならない。また、未払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による未払金とは区別しなければならない。

 

企業会計原則注解(注5)から引用

 

 

未払金については、改正前の企業会計原則でこのように示されていました。

 

未払金は、特定の契約等により既に確定している債務のうち、未だその支払が終わらないものをいう。

 

(旧)企業会計原則注解15から引用

 

 

どうやって使い分けるのか?

どちらも発生費用に関して、払っていない費用を表す勘定科目なのかな?って思うのではないでしょうか。

 

ポイントは、

  • 確定債務なのか否か
  • 継続した役務提供なのか否か

です。

 

一般的に未払費用を用いるのはどのような場合でしょう?

 

 

例えば、本社や事務所の家賃を支払っている場合。

 

 

例)3月決算会社の経理をしているわんころくんは、3月の会計処理を考えています。今借りている事務所の賃料は月に10万円で、支払は翌月5日に後払が必要な場合。

 

 

この場合、3月に必要な仕訳は、

(借方)支払家賃(3月分) 10万円 (貸方)未払費用 10万円

 

 

となりますね(いや、家賃はふつう前払だろ!というクレームは受け付けません。笑)。

 

 

未払費用を使っているのは、

家賃の支払(事務所を借りる行為)が継続して行われることが契約で決まっている前提があるからです。

 

通常であれば払った時に、

(借方)支払家賃 10万円 (貸方)現金預金 10万円

 

 

とすればいいやん!

って思ってしまいがちですが、

会計では発生主義という概念があります。

 

ざっくり言うと、

今期に発生した費用はすべて今期に計上してね!

ということです。

 

今回の例示で説明すると、

後払の費用(3月発生費用を4月に支払)を4月に費用処理してしまうと、

3月に計上すべき費用が3月に計上されないことになります。

 

なので、

まだ払っていないけど(払うのは4月だけど)、3月に計上してね。

 

ということです。

 

え?未払金じゃだめなの??

 

って思った人は鋭いですね。

 

未払金は既に確定した債務について使う勘定科目になります。

 

 

は?

って思った人ももう少しお付き合いください。笑

 

 

 

決算は通常1年で区切られますよね。

それは継続企業の前提(企業が未来永続的に存在する前提)で、1年ごとに会社の成績を示してくださいね、という会計のルールがあります。

 

 

なので、3月決算であれば、通常、

4月1日〜3月31日までの1年間が1会計期間になりますよね(四半期については無視しています)。

 

 

もし、決算が1年で区切られていなかったとしたら、

家賃の契約書上に

「2017年4月〜2019年3月で発生した家賃100万円を、2019年4月5日にまとめて支払してください」

と書いていれば、

 

2019年3月に

(借方)支払家賃 100万円 (貸方)未払金 100万円

 

とすればいいんです。いや、ほんとに。

そんなことありえませんが。。。

 

家賃の支払って、普通はその会社がビジネスを続けている限り発生し続ける継続的な費用ですよね。

事務所は借り続けないといけませんから。

 

ただし、会計は1年で区切らないといけないから、まだ払い切っていないけど(今後も支払を続けていくけど)、

その期に費用処理しないといけいないがために、

 

(借方)支払家賃(3月分) 10万円 (貸方)未払費用 10万円

 

という処理をしているんです。

 

なので、未払費用の定義にも

「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合」と書いています。

 

 

逆に言うと、

 

例えば、3月の1ヶ月間(契約期間:3月1日〜3月31日)だけ単発でコンサル会社にコンサルティング業務を依頼して、

その支払50万円は4月末にする場合は、

 

3月に、

 

(借方)支払手数料(コンサル費用)50万円 (貸方)未払金 50万円 

 

 

という仕訳が必要なんです。

 

この場合は、3月で全ての取引が終了ですよね。

こういった場合は、未払費用は使いません。

未払金を使います。

もうサービスは受け切って終わっているし、確定債務ですから。

 

 

小物を買ったときも一緒ですね。

物を買い終わったら終わりですから、払っていなかったら未払金です。

 

 

 

費用項目だから未払費用

 

 

ではないので注意しましょう。

 

 

未払費用は経過勘定項目なので、仮勘定なんです。

確定債務である未払金とは区別する必要があります。

 

 

役務提供はすべて完了し、確定しているのか?

今後も発生する継続的なサービス提供なのか?

 

 

という点を意識すると良いと思います。

 

そう言う意味では、

「未収入金」(確定)と「未収収益」(経過勘定)

「前払金」(確定)と「前払費用」(経過勘定)

も同じです。

 

 

簿記の勉強をしていると、

どうしても

「問題集でこういう表現が出てきたら、この勘定科目で仕訳すればいいんだ」

って丸暗記してしまいがちですが、

それでは試験に受かっても、その後使える知識にはなりません。

 

 

今回の「未払金」と「未払費用」のように、

似ているけど、どう違うのか?

を意識するだけでレベルアップできるのではないでしょうか?

 

 

簿記の勉強を本格的にはじめてみたい人は、

手軽な動画から始めてみてはいかがですか?

初月無料で日商簿記3,2、経理の仕事に役立つ150以上の動画が学べるサイト【Accountant's library】

 

 

独学で勉強する場合は、

オススメ教材をこの記事で紹介していますのでよかったらどうぞ。

スポンサーリンク